オーバークロックの方法


オーバークロックという呼称

 ところで私は「オーバークロック」という表現をしていますが、日本では「クロックアップ」の方が通りがいいようです。しかしこれはよくある和製英語というやつなので、一応正しい英語の「オーバークロック」という言葉を採用したいところです。しかし言い馴れた「クロックアップ」を多用すると思いますが許して下さい。


2つのアプローチ

 先にCPUのクロックは与えられるものだと説明しました。これをベースクロックといいマザーボード側で、水晶発振子を使って発生させます。CPUから見ると外部クロックと呼ばれます。これが今のマザーボードでは多くは66MHz60MHzです。以前は50MHzも多かったですし、一方75MHzとか83MHzなどというものもあります。また今後は100MHzなんていうのも近いうち出てくる予定です。これはCPU以外の多くのの部品を動かす重要な基本クロックです。

 しかし随分低い周波数だなと思われた方もいるでしょう。CPUは今や200MHzが当たり前なのに、なんだ66MHzとはと。しかしCPUという限られた空間では200MHzでも問題ないのですが、M/B全体の広い面積を走り回るデータはそう簡単には行きません。66MHzでもなかなか大変なのです。それに後述しますが、CPU以外の部品が遅いためベースを上げる必要性がなかったのです。しかし最近になってやっと周辺部品も高速なものが出てきため、ベースクロックアップという重い腰をベンダーが上げ始めたところです。

 しかしCPUとしてはもっと速く動ける訳ですからこれに付き合う必要はなく、自らこれを倍増して動いています。実際120MHzのCPUはベース60MHzを2倍にしている訳です。これがベースが66MHzなら133MHzとなることは容易に理解できるでしょう。ただ倍率というのは、例えば2.2倍といった細かい倍率にはできません。せいぜい2.5倍といった0.5倍単位でしかサポートされないのが普通です。またベースクロックも前述の5種類くらいしかありません。以下にパターンを表にしてみました。

  50MHz 60MHz 66MHz 75MHz 83MHz
1.5倍 75MHz 90MHz 100MHz 113MHz 125MHz
2倍 100MHz 120MHz 133MHz 150MHz 166MHz
2.5倍 125MHz 150MHz 166MHz 188MHz 208MHz
3倍 150MHz 180MHz 200MHz 225MHz 250MHz
3.5倍 175MHz 210MHz 233MHz 262MHz 291MHz
4倍 200MHz 240MHz 266MHz 300MHz 333MHz
4.5倍 225MHz 270MHz 300MHz 337MHz 375MHz
5倍 250MHz 300MHz 333MHz 375MHz 416MHz

 縦軸に倍率、横軸にベースクロックを配置しています。標準ベースクロックの66MHzの欄には見覚えのある周波数が殆どなのが分かるでしょう。基本的には動作周波数から倍率とベースクロックが分かると思います。たとえば266MHzなら66MHzの4倍だなとか120MHzは60MHzの2倍だなとかですね。もっとも150MHzのように50MHzの3倍と60MHzの2.5倍と75MHzの2倍という複数のパターンが考えられるものもありますが、この場合75MHzのベースクロックというのは実は業界標準外ですし、50MHzは既に過去のものとなりつつあるので、大抵は60MHzの2.5倍であると思います。
 このようにベースクロックと倍率があり、その掛け算でCPUの動作周波数が決まるので、いずれか又は双方を変更してオーバークロックしていくのだなということは、もうお分かりでしょう。ではそれぞれの方法のメリット、デメリットを探ってみましょう。


ベースクロック

 もしベースクロックを上げることができたらこれはなかなかいい方法です。と言うのは前述したようにこれは多くのパソコンの部品が動く基本クロックですから、これを上げればCPU以外の部品の性能も向上するからです。しかし巷でいわれるほど効果がある訳ではありません。実際ベースクロックを上げたことによって動作周波数が上昇する部品は限られており、更にパフォーマンスも向上する部品となると非常に限られているからです。ではいったいどの部品がどのくらいの効果で性能があがるのでしょうか。それを見る前にベースクロックを発生させるメカニズムと部品をみてみましょう。


オシレータとPLL

 まず基本クロックはオシレータという水晶発振子が14.318MHzという周波数を発振します。この周波数をうけてPLL(Phase Locked Loop)という部品(QPFのIC)が様々な周波数を作りだし、必要なところに供給します。ベースクロックというのもこのPLLが作り出す周波数の一つです。殆どのM/Bはベースクロックが可変ですが、PLLの作り出すすべての周波数が可変な訳ではありません。供給先には決して規定のもの以外の周波数を与えてはいけないものが結構あります。たとえばシステムクロックです。これは所謂時計ですから、その基準クロックを変えてしまったら、めちゃくちゃな時間をPCの時計が刻むことになります。またI/Oコントローラなども24MHzという決まったクロックでないと全く動作しないようです。ベースクロック以外は全て固定であると考えていいでしょう。ベースクロックはシステムバスクロックなどとも呼ばれますが、決してシステム全体のベースになっているわけではなく、多くの部品はベースクロックとは関係ないクロックで動作しています。

 ベースクロックが可変であるといっても上記の5種類のうち通常は66MHzと60MHzだけで、せいぜい50MHzがあるくらいです。75MHzや83MHzは標準外なのでサポートしているマザーボードが少ないです。しかし実際は隠しでサポートしている場合も多いようです。そのへんのことは秋葉のジャンク屋が詳しいかもしれませんね。また改造もできます。基本的にはオシレータを変えればいいのですが、前述のようにこれを交換しただけではシステムクロックがめちゃくちゃになり、I/Oコントローラも動かなくなります。これらにはもとの周波数を与えなければならないので、どうしてもPLLにも手を入れる必要があり、このピン情報 が必要です。私のM/B(ASUSTekのP2L97)に搭載さていたPLLはICS社のものでしたが、同社のホームページ(http://www.icst.com/)にピン情報が公開されていました。このような情報が公開されていないとちょっと無理ですね。

 改造に関してはこちらが非常によい報告をされているのでご覧ください。

 ところでアップの対象となるベースクロックはすべてのパソコン部品に関係した周波数ではないと述べました。ではいったいこの周波数はどこに供給されるのでしょうか。実はこれが供給されるのはPCIバスメモリバスCPUバスの3個所だけです。結局ベースクロックのアップの効果が及ぶものはこの3つのバスに繋がった部品だけということになります。CPUバスは言うまでもなくCPUへの供給ですから、検証する必要はないでしょう。ただ単にベースクロックを上げればCPUのクロックも上がるという当たり前の話しです。ここではベースクロックはCPU以外にどのような部品に性能向上をもたらすかと言う検証ですから、前の2つを見ていきましょう。


PCIバス

 PCIバスには通常ベースクロックの半分の周波数が供給されます。66MHzならは33MHz、83MHzなら41.5MHzになります。PCIの規格では33MHzということになっていますから、41.5MHzでは規格を大幅に上回るのでここに問題が発生します。どのように問題なのか、実際41.5MHzで駆動した場合本当に速くなるのかなどを接続機器毎にみていきましょう。

 まずビデオカードですが、これは独自のクロックをもっており、バスの速度が上がっても殆ど効果はありません。むしろ独自クロックがPCIからは33MHzでデータが来るという前提で設計されていますから、データのやり取りに不整合が起こり問題が発生する訳です。しかしこのビデオカードのクロックもアップするということも不可能ではありません。Mystiqueなどはソフトでもできるという情報があります。しかしこれによってPCIバスクロックアップによって起きた不具合を解消できるかはわかりません。しかし性能が向上することは確認されています。もっとも性能向上に関してはPCIバスクロックアップとは関係ありません。バスクロックが通常のままでもカードのクロックを上げれば性能は向上します。まあ不具合の解消と性能アップを同時は図れれば言うことがないのですが、このような実験は私はまだ見たことがありません。

 次にSCSIカードですが、これも独自のクロックを持っています。ですからバスクロックアップの効果は全くありません。ビデオカード同様に不具合を起こす可能性だけを増すことになります。しかしこれもビデオカード同様カード側のクロックをアップできます。これを合わせて行えば、一応転送速度の向上は図れますし、PCIバスクロックアップによる不整合の解消にも役立つことは確認されています。AdaptecのAHA-2940などは42MHzのオシレータが積まれているようですが、これを60MHzのものに交換すると41.5MHzのバスクロックとなかなか相性がいいようです。もっともSCSIに接続されるHDDなどのストレージデバイスはそれ自体の速度というものが非常に重要です。回転数やシークタイムやMedia Tranfer Rateなどドライブの持つ性能まで、上記の改造で向上する訳ではありません。たとえ改造をしても結局全体としては大した向上には繋がりません。

 LANカードなどその他の機器も基本的には独自のクロックで動いているので、効果のないものばかりです。Soundカードなどはよくわかりませんが、クロックアップで音質がよくなるなどという話は聞いたことがありません。

 最後にIDE関連ですが、これは独自クロックというものはないのでバスクロック上昇の影響を直接受けます。ちょうどSCSIのカードのクロックも上げたようなものです。しかしSCSIの場合と同様、ドライブの性能まで向上されることができる訳ではありませんから、結局大した効果ありません。

 こうしてみるとPCIバスクロックの上昇は、「百害あって一利なし」とは言わないまでも、利点よりも害の方が大きいので、できれば上げない方がいいというのが結論になります。問題点に関しては後ほどもう少し述べますが、効果という点では殆どないということはご理解頂けたと思います。


メモリバス

 さてメモリバスはどうでしょうか。まずメインメモリですが、FPMEDOなどは66MHzでも速すぎてウェイトを入れている始末です。これが長らくベースクロック66MHzを安泰にさせてきた主な理由であると言われています。ですからメモリバスクロックを上げても余計にウェイトを増やさねばならないだけで全く効果はありません。

 しかしSDRAMは違います。SDRAMの登場でついにメインメモリも66MHzに同期できる、つまりウェイトなしで追従できるようになったのです。ベース100MHzなどという構想が浮上してきたのもひとえにSDRAMの登場のおかげです。とはいえSDRAMは登場して日が浅いですから、現在市場に出ているものは残念ながら66MHzか75MHzにまで同期するのがやっとで、83MHzだど結局ウェイトを入れる必要のあるものが殆どです。ただ100MHz時代が控えているため、徐々に高速なSDRAMが登場していますから、83MHzで同期できるSDRAMの入手もそう困難ではなくなるでしょう。しかし実はメインメモリの高速化はあまり意味がありません。それは次ぎに述べる2次キャッシュがあるからです。

 現在CPUは80%から90%は2次キャッシュとやり取りしていると言われています(この比率をキャッシュのヒット率といいます)。キャッシュのアルゴリズムがかなり洗練されてきたのでしょう。メインメモリより高速な2次キャッシュへのヒット率の向上はシステム全体としては当然大きなメリットです。しかしメインメモリにとってはその比重を低下させる要因であります。このようなものを高速化しても全体のパフォーマンスにとっての影響はとても低いを言わざるを得ません。その全く裏返しのことが2次キャッシュには言える訳です。

 2次キャッシュは今パイプラインバーストSRAMと呼ばれるものが使われています。SRAMを使っているので、DRAMを利用しているメインメモリより格段に速いように思えますが、実際は2年前までは2次キャッシュも66MHzに同期できませんでした(厳密には同期できるSRAMセルもあったのですが、非常に高価でとてもパソコンに使えるようなしろものではなかった)。それが2年半ほど前にパイプライン動作バースト転送のサポートにより、アクセス速度の遅い安いSRAMセルを使っても66MHzくらいなら同期が可能になりました。その後部品も洗練されて2年以上たった現在では100MHz程度なら余裕で同期するものも非常に安価に製造できるようになっています。

 ヒット率が80%を超えている2次キャッシュの性能向上は極めて重要です。これがベースクロックの上昇にリニアに着いてくるのですから、これだけでもベースクロックを上げる意味があると私は思います。反面結局ベースクロックアップの効果は2次キャッシュだけとも言えますが、たとえそれだけでも十分はパフォーマンスの向上を果たせるほど2次キャッシュは重要な部品であることは、いろいろな実験が証明しています。

 以下にASCII DOS/V ISSUE 1998年2月号で行われたベンチマークテスト結果の一部をご紹介しましょう。一応このような結果も出版社の著作権があると思いますので、詳細は記載できませんが、上記のことを説明するには十分説得力のある内容であると思います。編集部が独自に作成したテストプログラムのようですが、Word97とExcel97を用いたもので、文書整形、スクロール、フォント変更、ズーム、ワードオブジェクト、カット&ペースト、ワークシート操作、演算処理といった多岐にわたり、かなり現実の利用に即したテストであります。以下は上記のテスト結果である所要時間を単純に合計したものです所要時間ですから少ないものが優れたものであるということになります。

単位秒 MMX Pentuim K6
83MHz X 2.5 (208MHz) 141.95 129.99
75MHz X 3.0 (225MHz) 139.13 127.78
66MHz X 3.5 (233MHz) 143.30 131.60

 一番CPU周波数の高い「66MHz X 3.5」が一番悪い結果になっています。さすがに「75MHz X 3.0」の方が「83MHz X 2.5」に優っていますが、CPU周波数差を考えると明らかにベースクロックの高いこと、つまりは2次キャッシュの速いことが有利であるかがわかります。

 しかし賢明な方はもうお分かりかもしれませんが、2次キャッシュがベースクロックだけでなく、CPUの倍率アップとも同期して上昇できるPentium-IIPentium Proの場合は、ベースクロックアップの倍率アップに対するアドバンテージは殆どないことになります。以下に上記のテストと同じものをPentium-IIについて行った結果を示します。

単位秒 Pentuim-II
83MHz X 3.5 (292MHz) 95.18
75MHz X 4.0 (300MHz) 93.62
66MHz X 4.5 (300MHz) 93.95

 CPU周波数がほぼそのまま反映されています。特に全く同じCPU周波数になる「75MHz X 4.0」「66MHz X 4.5」が殆ど差がないのは、予想していたとはいえ驚きです。ベースクロックアップの効果はあくまで2次キャッシュだけであり、それ以外の部分には殆ど恩恵がないことを如実に示している結果であると考えます。

 少なくともPentium-IIの場合はもし倍率アップが可能なら問題の少ないこちらを選択した方がいいでしょう。しかし後述するように倍率アップが不可能なCPUが大変多いので、その場合はベースクロックを上げるしか方法がありません。かくいう私もPentium-IIですが、倍率アップができないのでベースクロックアップに走った一人であります。

 結論を申しますと、ベースクロックのアップのCPU以外の効果は2次キャッシュの向上だけであるが、Socket7の場合それでも十分に意味があり、CPUのアップしか望めない倍率アップよりも優先して行いたい、Slot1でも倍率アップがだめならやらざるを得ないということです。

 やるなら問題点は解消なしければなりません。ではもう一度問題点を考えてみましょう。まずメインメモリはウェイトを増やすと効果はなくなりますが、少なくともそれだけで不具合の解消はできます。現在多くのM/Bがこうしたメモリアクセスの調整ができるようになっています。そもそも大した効果がないのですから、不具合が起こるようなら迷わずウェイトを増して解消しましょう。問題はPCIをどうするかです。


PCI非同期

 もしベースクロックを上げても、PCIは上がらないなどというむしのいい方法があったらいいですね。ところがそんな我がままな設定が可能なM/Bが存在します。この場合はPCIバスに接続する部品の問題からは完全に開放されます。これをPCI非同期というのですが、これをサポートしたチップセットが存在し、それを搭載したM/Bなら可能な訳です。周波数の振り分けの問題ですから、PLLが対応していてくれればよさそうですが、そうはいきません。PCIはチップセットが扱うもっとも重要な部品の一つです(正式名称がPCIセットと呼ばれるくらいですから)。チップセットが預かり知らない速度で動いていたのでは困ります。PCI非同期はチップセットの対応が不可欠といえるでしょう。

 今のところIntelのチップセットで正式に対応を謳っているものはありません。SiSのチップセットはかなり前からPCI非同期をサポートしています。最近のSiSの55825598も対応していて、このチップセットを積んだM/BはPCI非同期の設定があります。また最近ではVIAのAppllo VPXがPCI非同期に対応しているということです。後発のVP3などが対応していないのに、VPXが対応している理由が分からないのですが、メルコのMTMV-BA5-VXというVPXを搭載したM/Bには確かに非同期の設定があるのは私が確認しました。

 ALiのAlladdin IV+「擬似的」にPCI非同期に対応しているということです。この「擬似的」の意味がよくわかりませんが、このチップセットを搭載したTX531というM/Bのマニュアルには非同期設定ができるという記述があるが、肝心の設定方法が載っていないというような誠にあやしい話しが某雑誌に載っていました。今のところ確実なのはSiSのチップセットのようです。価格も非常に安いですから断然お勧めです。(ただしSiSのチップセットに関しては32MB SDRAMにはご注意を。詳細は調査中。経過を知りたい人はメールを下さい)しかしM/Bによっては肝心の83MHz設定のないものがあるので、購入の際には気を付けて下さい。


PCI41.5MHzの問題

 さてPCI非同期のM/Bを手に入れることができればいいのですが、どうしてもIntelのチップが安心だからいいとか、既に持っているM/Bが83MHzの設定ができるのこれでやりたいということであれば、何とかPCI 41.5MHzの問題をクリアしなければなりません。

 先ほどは随分と悲観的なことばかり述べましたが、実際は結構いけるものが多いのです。ビデオカードは今では大抵41MHzでも動いてしまうそうです。SCSIカードはメーカーによって違います。以下にネットニュースで最近83MHzで動作しているビデオカードやSCSIカードがあるかアンケートをとっていましたので、その途中経過を紹介しておきます。しかしこれは個人が、うちでは動いたよという話で、メーカーが保証しているものではりません。

メーカー 型番 回答数
41MHzで動作可能なVGAカード
Canopus PowerWindow3DV/4MC 1
Canopus PowerWindow DX/4MC 3
Canopus PowerWindow968 2
Matrox Millennium 4
Matrox Mystique 1
#9 Motion77 1
Cardex ChallengerEV 1
41MHzで動作可能な3Dカード
IO-DATA GA-PVR3D 1
Canopus Total-3D 1
41MHzで動作可能なSCSIカード
Tekram DC-390 1
Tekram DC-390F 1
Tekram DC-390U 2
Tekram DC-310U 1
ASUSTek SC-200 3
Century CSAP-815AAF 1

 SCSIではAdaptecが挙がっていません。つまり83MHzでは動かないということです。私のマシンの場合(AHA-2940Uで実験)、動作が不安定というレベルではなく、アクセスすると即ハングといった、使い物にならない状況でした。しかし前述したようにカード側のクロックアップで問題を回避することができます。改造もそれほど難しくないようです。またノーマルでも十分動作するという情報もあります。

 IDE関連ですが、まず83MHzでは動かないという情報と100MHzでもOKという相反する情報があります。もっとも100MHzでもOKというのはUltra-ATAのHDDであり、それ以外はだめだという情報もあり、錯綜しています。実際私の経験なのですが、Quantum FB-STが75MHzでも不具合を起こしました。このHDDはUltra-ATAでは定番中の定番です。私もさすがにガッカリしたのですが、IDEのケーブルを短いものにした(というよりもM/Bから見て近い方のソケットに差し替えた)ら不具合がおさまりました。本当にこれで修復できたのか、そもそもこれが原因だったのかは分かりませんが、同じような話をもう一件だけ聞いています。高周波数にするとケーブルなどのノイズの問題もばかにならないと思うので、不具合が起こるようなら試みる価値はあるかと思います。

 実はこの後、83MHzもで行けました。少なくともこのFB-ST上にあるWindows95は正常に起動しました。いくつかのアプリも動き、実行できたベンチマークテストもあります。しかしHDBENCHのDirect Drawのテストでハングしてしまいました。もっともこの時CPUも375MHzになっていたので、一概にPCIのせいともいえないでしょう。結局上記のようにSCSIでは使い物にならなかったので、実験は中止。CPU倍率を下げて、CPUを安全に動かせる速度で83MHzを試してみるべきなのですが、今後トライしてみます。ただし前述のAHA-2940Uに関しては、83MHz X 4での実験ですから、純粋にPCIの問題であると思います。

 上記の私の経験のように75Mhzでも不具合の起こる可能性というのは多分にあります。しかし83Mhzよりは遥かに少ないと思いますし、解決方法も楽なものが多いです。PCI非同期が実現できない場合は75MHzくらいで我慢しておくのが賢明かもしれません。 私もベースクロックアップはあくまで倍率アップの代わりなので、何も目くじらたてて危険な83MHzにする必要もないのため75MHzで行っています。

 具体的な方法は通常マザーボードのジャンパディップスイッチというもので変更します。これらの位置や設定方法などはマザーボードによるので、マニュアルを参考にして下さい。マニュアルがない場合でも大抵はM/Bにシルク印刷されているので、分かると思います。ただ最近のマザーボードはBIOSで変更できるのもの出てきているようです。


倍率

 倍率もマザーボードのジャンパなどで設定するので、マザーボードによってサポートしている倍率が違います。サポートしていない倍率はできないことになります。これの改造方法、及びそもそも改造が可能なのかも知りません。

 また倍率の場合はマザーボードで設定できてもCPUが受け付けないという問題があります。そもそもマザーボードで発生させたベースクロックを実際に倍化するのはCPU自身が行います。マザーボード側からはその周波数を作って与えるのでなく、ただジャンパの設定にしたがってCPUに倍率を知らせるだけです。この時、CPU側である一定の倍率以上は受け付けないという状態があります。

 原理はいたって簡単です。マザーボードがCPUに倍率情報を知らせる方法は、CPU側には倍率情報を受けるピンがあり、マザーボードはそのピンにジャンパ設定などに従った電流を流すという方法で行います。今そのピンが2つあったとしましょう。

第1ピン 第2ピン 倍率
1.5倍
2.0倍
2.5倍
3.0倍

 上記の例では第1ピン、第2ピン共に電流が流れてなかったら1.5倍、第2ピンに流れていたら2倍というようにCPU側で認識します。
 ところがたとえば133MHzのCPUの場合、2.5倍以上にする必要がない訳ですから(メーカーとしては本当はオーバークロックなんてイレギュラーなことをやられては困る。またリマーク対策だともいわれていますが)、第1ピンの情報を殺してあるというか、受付ないというか、無視しているのです。

 ですからいくらマザーボード側から第1ピンに情報を流しても、CPU側では第2ピンでしか判断していないので、2.5倍などにすることができないのです。たとえば2.5倍に設定したつもりが、1.5倍になってしまう訳です。中には全く訳の分からん倍率になってしまうものもあるようですが。

 最近ではK6の233MHzが266MHz(4倍設定)にできないのも、Pentium-II 300MHzが333MHz(5倍設定)にはできないのも同じ理由です。これをよくリミッターがかかっているなんていいますね。回避する方法はわかりません。できたとしてもチップ内のことなので、相当困難であると思います。

 倍率の設定も前述のようにマザーボードのジャンパやディップスイッチで設定するので、実際の方法はマザーボードのマニュアルをみるとか、実際のマザーボードを覗いて頂くしかないのですが、ここまで解説しておきながら、これではあまりにも不親切なので、実際FMVの場合を解説しているページがあるので紹介しておきましょう。比企さんのページさるさんのページがとても纏まっていると思います。


動作上の問題点

 さて、これまで解説してきたのは、周波数を上げるための努力でした。しかしこれはオーバークロックにとって入り口に入った程度です。さんざん指摘してきたように、この後本当にその周波数でCPUが動くのかという重要な命題が待っています。

 もちろん多少のオーバーならその成功率が高いのがCPUの特徴であるとも述べてきました。多くの人が行っているオーバークロックは精々10%から15%程度だと思います。この程度ならかなりのCPUが追従できるようです。そしてその訳を説明してきたつもりです。しかし人間には欲があり、もっと上げてみたいと当然思うでしょう。私もそうです。その場合の問題点とは何なのでしょうか。

 これに付いてはさらに紙面を改めましょう。しかしこれはなるべく前ページの「ICの周波数」をご覧になったか(工事中なのに申し訳ありませんが)、または「ヴァイオレーションパス」「遅延」の意味を理解できる方に読んで頂きたいと思います。それらの言葉を説明なしに使っていますから。そのような方又はなんでもいいから読んでみたいという方はこちらへどうそ。


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